人生で初めて会社説明会に行ったら、社長さんに人生相談することになった話。

 

「わが社の説明なんかより、吉田君の人生の方が大事だ。」

 

開始5分。

始めに社長からの会社説明、先輩社員との座談会、工場見学、明るく和やかに、予定調和で進むはずの会社説明会は、生き方に迷える子羊が人生哲学の手ほどきを受ける人生指南塾となった。

 

一度きりの人生をどう生きるか?人は何をするために生まれてきたのか?

夢とは何か?志とは何か?幸せとは何か?

 

会社説明会が始まる直前に社員の方と談笑しながらうどんをすすっていたほのぼのタイムとは対照的に、さしの真剣勝負になった。

 

「大学で何を学んでいますか?」

名刺をいただき、簡単な挨拶をして、席に落ち着いた後、社長から開口一番発せられたのは、それだった。

 

答えに窮する。

 

「グローバルスタディズ課程というのに属しています。。」

 

何を学んでいるのかと問われると答えに困る。

 

社長:「それで宮崎でなにをしたいの?」

吉田:「宮崎から世界につながる仕事をしたいです。宮崎から世界に突き抜ける仕事を」

 

社長:「それで、なんで公務員?」

社長の眼差しは鋭い。絶対に嘘やごまかしがきかない凄みがある。自分と徹底的に向き合い、日々を真剣に生きたものにしかできない目だ。

 

結論からいうと、僕は終始うろたえていた。

どの質問にも、間をおいた。どの質問にも、目を逸らした。

言葉が何もでなくなる。あの目に届けられる温度を持った何かを僕は持ち合わせていなかった。

 

「本当に正直なことをいうと、」そういう枕詞を何度も使って、かろうじて絞り出した言葉でさえ、反応としての発話として処理される行為に毛を生やしたくらいの意味しか持ち合わせていないように思えた。例えるなら、自分のグラスには何万種類もの漢方薬を煎じた薬膳茶を注がれているのに、相手のグラスにはミネラルがほどんど入ってない味気ないウォーターを注いでいるような感じだ。伝わっただろうか?

 

2時間15分、社長は全力で優しさ(表情にはでてなかったけど、途中から優しい目になった気がした)と責任を持って語りかけてくれた。

 

もちろん社長の言っていることが全て正しいとは思わない。というかそれ以前の問題で、僕はまだまだ人生経験が浅すぎるので、半世紀以上人生に本気で向き合ってきた人が投げかける含蓄あるメッセージを十分に理解することができない。

 

ただ、一つ厳しい事実は理解できた。

「あなたにはビジョン(志)がない。」

 

そうだ、僕にはどうやらビジョンがないようだ。

自分の好きなことをやっていたら、人が集まった。評価された。でも、行き詰った。

なんでもやれる、あれもこれも興味がある。そのこと自体は問題じゃない。

 

ただ、「広く深く」は幻想だった。甘かった。気付いたら自分を見失っていた。そもそも見定めていたかも怪しいが。頑張ってはいた。でも楽していた。一つのことに集中して地道に努力を重ねて、それを経験にしていくことから逃げていた。本気でやらないと、極めないと、心を揺さぶる体験や感動は生まれない。要所要所で頑張ってはいるのに、何を一番頑張ったかと聞かれるとわからない、答えられない。それが留学を終え、あっという間に大学4年生になってしまった僕の現状だ。能力だけで、結果を出そうとするから、努力をしない。努力をしないと実力がつかない。エネルギーを集中させ継続的な努力を重ねること、習慣をつくること、今からやるべきことだ。

 

しかし、無駄ではない。

しかし、今までやってきたことは決して無駄ではない。方向性は間違っていたかもしないが、全力で真剣に生きてきたと思う。自分の生き方に頭を悩ませるくらいには自分と向き合っている。

ここで諦めたくない、妥協したくない。ここを新たな出発点にしよう。