国立台湾師範大学美術史大学院の授業で文化遺産保存の事例研究を始めたよ!

師範大学美術史大学院の授業で地元のモダニズム建築について研究します!!


今、留学先の台湾の大学で履修しているCultural Heritage Conservation and Cultural Policy 「芸術遺産保存と文化政策」という授業の一環で、保存の方法やそれを取り巻く政策について歴史的、倫理的、経済的な観点から議論の余地がある芸術作品を一つの事例として「どのように保存すべきか、なぜ、その保存方針に至ったのか、その理由は倫理的に正しいといえるか」等々を調査・研究するケーススタディを行なっています。

いつものように授業の名前に一目ぼれして、好奇心だけで飛びついてみたところ、案の定とても面白いし、自分の故郷のあり方についてアカデミックな興味を持って考える大変いい機会を得ることができました。

私がケーススタディの対象として選んだのは、地元の都城市民なら誰もが知ってる「都城市民会館。」

1966年に日本を代表する建築家の一人、菊竹清則氏が設計した文化会館で、高度経済成長の時代に、彼が黒川紀章氏らとともに提唱した、社会の発展に呼応して変化・成長する建築を説く「メタボリズム」という建築運動の代表作の一つに数えられています。

このように建築学史的、歴史的文脈から大変価値があることは言うまでもないのですが、実はこの「都城市民会館」、今年の2月に都城市議会で事実上の取り壊しが決まり、現在、約1週間前の時点で、平屋の部分は更地と化してしまいました。今まさに、本体取り壊しの工事が始まったところで、今日もそして明日も、着実に、淡々と、破壊されていくでしょう。

ちなみにその直後に、ユネスコの諮問機関であるICOMOS (国際記念物遺跡会議)から、国、県、市に危機遺産勧告が手渡されています。取り壊すなという勧告です。

率直に言って、本当に悲しいです。取り壊しが進んでいく様子を目にする度に、絶対に取り返しのつかな
いことをやってしまっているという暗然たる喪失感を感じます。一体何年先のことを考えたらこのような結論にいたるのでしょうか?5年?10年?お金がかかるから「シカタナイ、メンドクサイ」で片づけていいことなのでしょうか?街の歴史的、文化的アイデンティティを自ら失うという計り知れない代償と引き換えに?疑問は尽きません。

大学3年生にして、都城を離れて2年以上が経ち、留学先の大学の授業でようやく、この問題について真剣に考え始めたのですが、時すでに遅し。
市民会館の価値や存続の在り方につて考える機会は少なくなかったので、ずっと知っていたのですが、こんなに話が進んでいるとは今年の夏に実家に帰るまで気づきませんでした。

小学1年生の時に、通い始めたばかりの絵の教室で、市民会館のスケッチをした時の記憶はなぜか鮮烈に残っています。
高校2年生の時には、美術部の先生のお誘いで、高嶺格さんという現代美術家の市民会館をテーマにしたインスタレーション制作のボランティアをしました。
それから、微かですが、開館時に1度だけ映画を見に行った記憶があります。

今の僕にできることは僕なりに一生懸命勉強して、芸術遺産保存の観点から、この都城市民会館をめぐる一連の政策を学問的に評価し、英語で小論文を書くこと、それからそのアウトプットを共有し、少しでも多くの人にこの市民会館の存在とその処遇について考えを巡らせてもらうきっかけをつくることだと思っています。
見たところ、都城市民会館について言及している英語のアーティクルはほとんどないようなのでいくらか意義はあるかと思って頑張ります!!