読書日記1日目:「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」東畑開人著 

読書日記1日目

「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」東畑開人著

 

京大ハカセが落ちたウサギ穴

臨床心理学一筋、ついに京大のハカセ号を取得した著者。アカデミアにとどまらず、臨床の専門家として患者を「セラピー(治療)」することに燃えていたが、高給料でカウンセリングが業務の中心であることという絶対条件のもと行った就活は困難を極めた。

そんな時、ある沖縄の精神科デイケア施設が京大ハカセの目に留まった。月給25万で賞与6カ月、カウンセリングが業務の7割。現場で修業し、大セラピストになって凱旋する英雄物語を思い描き、一気阿成に飛び込んだ精神科デイケア。そこは、ハカセが生きてきた世界の価値観が反転した不思議の国のウサギ穴だった。「する」ことと「いる」こと、「ケア」とは何か?、「セラピー」とは何か、葛藤を繰り返し、ハカセはどう変わり、どんな答えに辿り着いたのか。デイケアでの波乱万丈の4年間を綴った大感動のエッセイ風学術書

 

なぜ、居るのがつらいのか?

本書著者が提起しているテーマを私なりに一言でまとめると、「なぜ人は居るのがつらくなるのか」ということだ。この本の書名の通り、デイケアに来たばかりの頃、著者は「居る」ことができず、「する」ことをずっと探していた。デイケアでは毎日同じような日々が繰り返される。病院でのカウンセリングの傍ら、デイケアであまりにも退屈に感じる日々の中で、「それでいいのか、それ、なんか意味あるのか?」という問いが頭の中に浮かび続ける。「ただ、いる、だけ」を守るために多大なエネルギーとお金が注がれる現実。著者は悩み続ける。なぜなら、著者が学び続けてきた「セラピー」は変化を目指し、結果を求めるものだったからだ。「ただ、いる、だけ」と「意味あるのか?」の葛藤に決着をつけるため、その葛藤の正体をつきとめるため、著者はデイケアでの様々な体験から思索を巡らす。デイケアでは、なぜ同じ日々の繰り返しを守っているのか?なぜ、それが重要なのか?退屈とはどういうことか?退屈の価値とは何か?遊びはどのようにして生まれるのか?デイケアの中の中動態について。そしてケアとは何か?葛藤の裏にいる真犯人とは?

 

結論(ネタバレ)

「いる」の価値を脅かす真犯人の正体は「エビデンスと効率性の光。」つまり、会計監査社会だと筆者は表現している。